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英語のオシゴトと私 第19回―真島由朱
語学とコンピュータと、教えるという仕事と

2021年3月22日|英語のオシゴトと私

 おもしろい。おもしろい。それは単純に、おもしろい。
 私を今まで動かしてきたものは結局、その感覚に尽きる。

 

 さて、初見では誰もが決して読めない私の名前「由朱(ゆうあ)」。この漢字自体に意味はなく、画数が11画だ、というのがポイントだ(妹がひとりいるが、彼女の名前もまた11画)。つまり私の両親は姓名判断派で、11画・・・その画数に込められた子どもへの望みは「早く自立すること」だった。
 自立、すなわち「自分で金を稼げる人間になる」こと。そこで選んだ「手に職」、それが「語学」だったわけである。金がないから塾や予備校は一切なし、進学は国公立大学しかアカン、自宅から通える範囲で・・・と親に厳命され、選べた候補はただ一つ。大阪は箕面の山奥にある、「大阪外国語大学」である。十いくつある専攻言語から、私が選んだのは・・・英語、ではなく、ドイツ語だった。「なんかかっこいい気がした」と、当時18歳であった本人は主張していた。

 

 ドイツ語を学ぶのはおもしろかった。英語と最も近しい兄弟言語。語彙の多くはその根をひとつにしているが、文法ではいろいろな違いがある。「国語と英語の点数がいいから、とりあえず文系行くか」的な捉え方しかしていなかった高校時代から、大学に入って私は初めて「語学」の楽しさを知ったのだ。せっかく外国語大学に入ったのだからと、ドイツ語だけではなくイタリア語やフランス語、ロシア語など色々手を出してみた。

 

 違う文字、異なる文法。色とりどりのルール、そして文化。
 おもしろい。おもしろい。それは単純に、おもしろい。

 

 大学に入ってコンピュータ室が自由に使えるようになったのも大きかった。インターネットに自由に触れることができるようになったのだ。英語やドイツ語のサイトが簡単に見られる。遠い遠い国の人々が書いたモノをスクリーン上で読めるのだ、それも瞬時に! 今でこそみんなスマートフォンを持ち歩くのが当たり前な時代なわけだが、当時やっとガラケーを手に入れたレベルの私にとって、まさにそれは情報革命のようなものだった。

 

 ネットワークで繋がる。別の国にいる相手にメール。自分で好きなようにウェブサイトを作る。
 おもしろい。おもしろい。それは単純に、おもしろい。

 

 だがしかし、語学とコンピュータでおもしろがっていた私の楽しい生活は無情にも叩き潰される時が来た、あの地獄のような就職氷河期という化け物に。就職先なく大学を卒業した私は行き場を失い、見事ニートとなった。世を儚みすっかりやさぐれ、一時期は匿名掲示板に張り付いて時間を溶かす荒んだ生活をしていたものの、なんとかコンビニバイトを見つけフリーターへとジョブチェンジした。
 そんな時だった。大学の所属ゼミの先生が高校講師の口を紹介してくださったのだ。渡りに船とばかりにそれに飛びつき、私は「高校の先生」になった。

 

 初めての勤務校での経験は、辛いことも多かったが、とても考えさせられるものだった。就職も進学もしないまま卒業する生徒も多く、「何で英語なんてせなアカンのや、俺んち貧乏やから海外なんて一生行かれへんで」と言う生徒たちを前にして、私はどうやって英語を教えたらいいか、自分なりに懸命に考えた。研究会や学会に行き、方法を学ぼうとした。
 だって、語学を学ぶことは、おもしろいことなのだから。

 

 私は生徒にも知ってほしかった。母語とは違う言葉を、それを学ぶことによって拡がる世界を、「違う」ものがある、「違う」ものを知る、そのおもしろさを。
 また、どのように語学を教えるか、を考えること自体もおもしろいことだった。当然苦しい時やうまく行かなくて凹む時もある。
 けれども、生徒が「わかった!」と言ってうれしそうな顔を見せてくれた時。その時こそが、この職務で何より素晴らしい瞬間。

 

 そして今私がおもしろがっているものは、この新型コロナ禍で皮肉にも一挙に拡がったオンライン授業・・・中でもGoogle社のG suite for Educationをどう学校生活に使うか。Google for Education認定トレーナーの資格も取り、さらに知識を深めていくつもりだ。
 勤務校にG suite for Educationが入ってまだ半年を越えたくらいだが、すでに様々な面で利活用されている。授業でのグループワークや文書作成はもちろん、LHRでの諸連絡やアンケート実施。修学旅行の事前・事後学習や総合的な学習をGoogleスライドなどを使って行うなど、今まではできなかったおもしろいことがたくさんできるようになってきた。
 そしてその活動は電子データとして蓄積され、生徒たちの学習や学校生活に役立っていく。もっと環境が整備され、もっと皆で使い込んでいけば、きっと授業も行事も学校生活も、さらにさらに愉快になっていくだろう。

 

 おもしろい。おもしろい。それは単純に、おもしろい。
 私を今まで動かしてきたものは結局、その感覚に尽きる。

 

 これからも、私は英語科教諭として、おもしろがっていく。
 語学とコンピュータと、教えるという仕事を。

 

【プロフィール】真島 由朱(ましま・ゆうあ)
人間を始めて今年で40周年。ホモ・サピエンスをやっていくには適性がやや低いらしく、まだちょっと足取りがおぼつかない中堅教員。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ドイツ語科卒業。氷河期時代の就職戦線に敗れ、ニート・フリーター→そこから常勤・非常勤講師を経て(アホなので何回も教員採用試験にすべった)教諭に。
現在の勤務校は大阪府立箕面高等学校。2021年2月よりGoogle for Education Certified Trainer(認定トレーナー)になり、なおさらインターネットとICT技術を使った授業運営などに前のめりになっている。

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