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英語のオシゴトと私 第9回 ―細井俊克
現代の教師として生涯学習社会を生きること

2019年9月6日|英語のオシゴトと私

 東京都小平市、白梅学園の細井俊克です。立命館中高の今井先生からご指名をいただきました。これまでの執筆者の方々が、私にとっては雲の上のような存在のスーパースター的先生方でありまして、正直荷が重いとは思った次第。しかしながら、尊敬する今井先生のバトンということになれば、いい加減なことを書くわけにはいきませんし、下手をすれば同郷人として活躍されている先生をはじめ北海道の恥さらしになってしまいます。心していきたいと思います。
 さて、「英語のオシゴトと私」というお題です。自分のことをいつまでも授業が下手だなぁ、素人だなぁ、と思いつつ英語教育に携わりながら、数えてもう十数年になりました(教え子たちには「本当にごめんなさい!!」)。実年齢の割には教歴も短く、まだまだ新参者の気持ちが消えないのは事実でありますが。今回は、私が英語をオシゴトにするまでの紆余曲折、波瀾万丈(という割には小粒なのですけれども…)のパーソナルヒストリーをご紹介して、教員にもいろんな人がいるよなぁ、というようなことを再認識する機会としてでもご笑覧いただければ幸いです。
 生徒に聞かれれば年齢28歳と答えることにしている私、北海道を大学受験で出まして東京に渡り、実質、東京人としての期間の方がはるかに長い人生と、既になってしまいました。大学では外国語学部英米語学科というところに在籍し、高校1種の教員免許を英語科と地歴科で取得、華々しく教員歴をスタートさせるかと思いきや、職業として最初のキャリアとなったのは水泳のコーチでした。フリーの水泳コーチとしていろいろなところのスイミングクラブに「遊軍指導」(自分の仕事を勝手に自称したものです)しながら、母校の大学の水泳部を指導するという生活を続けていました。英語教育を考えればわかるかと思いますが、can doであればcan teachというわけではないのは周知のとおり(このことをわかっていない人がいっぱいいる‼)。泳げはしましたが、泳ぎの教え方は素人だと気付き、大学院で社会人学生として人間科学を学ぶことにしました(英語とはなんにも関係ないと思うかもしれませんが、身体活動の教授‐学習論をここでしっかり学んだことは、英語教育や生涯学習にも通じる得難い経験で、今の私には確実にプラスになったと思っています)。
 そのような生活をしていて働きながら大学院のマスターを修了、どうにかこうにか契約社員的な立場で水泳コーチを続けていたわけですが、スイミング関係でかかわりのあった前々任の芝浦工業大学中高で英語の教員が足りないということになり、非常勤講師として英語を教え始めたのが今から14年前の話になります。英語教員としてのキャリアはそこから。さらに学校を1つ経て、現在の白梅学園に落ち着いて現在6年目。
 こんな私ですが、現在も故あって、働きながら慶應義塾大学文学部に学士入学し、勉強させていただいております。この原稿も夏休みの真っただ中に取り組んでいますが、ちょうどスクーリングで慶應大学日吉キャンパスに毎日通っておりまして、慶應日吉メディアセンターのPCを使わせていただいて書いております。こんな感じで、一体全体いつまで勉強を続けるんだという感じではあるのですが。仕事しながら勉強することがどれだけ普段の授業につながるか。意識しているところはありませんけれど、今の立場に立ってみれば、いろいろなところの研修会に参加したり、授業で様々な分野の方々とかかわったりすることで、少なくともアクティヴ・ラーナーとしての姿ぐらいは、生徒たちに見せることができるかもしれません。
 生涯学習ということが叫ばれるようになって久しいですが、教育現場にいる我々教師は、なかなか新しいことを学んだり、幅を広げたりする時間的余裕が保証されているというわけではありません。やるべきことは山積みになっているし、部活や校務でも、本当に時間がない。だけれども、生涯にわたって少なくとも学び続ける方法を伝えていかなくては、持続可能な社会の担い手を育成していくことはできません(大前研一さんによれば、学ばない先生は生徒に対して不利益を与えているに等しいそうです)。そういうことのヒントを、忙しい中でもなんとか生徒に示すことができたらいいな、と思っているのです。明日どうなっているかわからないような、格差と不安定さに慣らされてしまっているような現代だからこそ。

【プロフィール】細井 俊克(ほそい・としかつ)
学校法人白梅学園 白梅学園高等学校 英語科 教諭
北海道帯広市出身、帯広三条高校、東京外国語大学卒、日本大学大学院修了。
日本スポーツ協会公認コーチ(競泳)、米国スポーツ医学会認定エクササイズフィジオロジスト。
水泳コーチとして活動したのち、2006年より芝浦工業大学中学高等学校を皮切りに教員生活をスタート。英語のみならず運動科学分野での経験を生かし、国立健康・栄養研究所において技術補助員も務めた。所属学会は日本医療情報学会、日本教育工学会、語学教育研究所など。座右の銘は小学生の時から「大器晩成」。

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