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オーレックス和英「日本紹介」①納豆 柏木厚子・Arthur O’Keefe

2017年4月19日|日本紹介

 国際交流の場では、日本のことを英語で発信する力が求められます。その力を養成する助けとなるように、『オーレックス和英辞典 第2版』中のコラム「日本紹介」では、身近な日本文化や習慣などを英語で紹介しています。
この「日本紹介」の英文を素材に、役に立つ英語の表現や、英作文のコツなどを解説していきます。ぜひ英作文のステップアップに役立ててください!

 


第1回は「納豆」です。

Natto is fermented soybeans. It is commonly mixed with soy sauce and Japanese mustard and served on top of rice. Other ingredients such as chopped green onion, raw egg, and dried bonito flakes may also be added. It is usual to stir the natto vigorously before eating. With its pungent aroma and sticky texture, it is one of the less popular Japanese foods globally. (『オーレックス和英辞典 第2版』 p.1279)

単 語

fermented   発酵させた
vigorously   力を入れて、勢いよく
pungent   (においや味が)刺激的な
aroma   (いい)におい
texture   食感

日本語訳

納豆は大豆の発酵食品です。一般に、しょうゆ・和からしと混ぜ合わせてご飯にかけて食べます。刻みネギ、生卵、かつお節などを加えることもあります。食べる前には納豆をよくかき混ぜるのがふつうです。鼻につんとくるにおいと、ねばねばした食感があるために、納豆は外国人が敬遠する日本食の一つです。

解 説

一般に…混ぜ合わせて  It is commonly mixed …

日本語は主語を省略して能動態で表現する場合が多いですが、英語では受動態を使うと自然な表現になることが多いようです。commonlyはusuallyに置き換えても可。

ご飯にかけて食べる  served on top of rice

「かける」を和英辞典で引くと、(液体を)pourや(粉状のものを)sprinkleなどの単語がありますが、納豆にはどちらの単語もしっくりときません。英語では「(納豆を)ご飯の上にのせる」の発想で served [OR eaten] on top of riceの表現になっています。ほかにも「(納豆を)ご飯と一緒に食べる」と考えてeaten with rice も可能。served with riceは、ご飯と納豆が別々の器に入って出てくるイメージがあるので避けた方がよいでしょう。

…をよく混ぜる  stir … vigorously

mixは「(2つ以上のものを)混ぜ合わせる」という意味で、「(納豆を)かき混ぜる」を表現するためにはstir「(液体などを)かき混ぜる」の方が適当です。stir … vigorously ということで、納豆のねばねば感を出すために勢いよくかき混ぜているイメージになります。

鼻につんとくるにおいと、ねばねばした食感があるために
 With its pungent aroma and sticky texture

  • withは原因・理由を表し「…のために、…のせいで」の意味になります。ここではwithの代わりにbecause of、due toなどを使うことも可能です。また、接続詞であるbecauseやasを用いて “As natto has a pungent aroma and sticky texture…” という言い方もできます。
  • 外国人が嫌うにおいなのにaroma「(いい)におい」を使ったのは、pungent のあとにsmell (しばしば「悪臭」の意味)を使ってしまうと、食べ物ではなく「臭い靴下」といったイメージになってしまうからです。もしもここでsmellを使いたい場合には、“strong smell”とか“sharp smell”ぐらいの言い方が適当でしょう。smellを動詞として使うと、“As natto smells strong [OR unusual, funny] and its texture is sticky…” のような感じになります。

外国人が敬遠する日本食  the less popular Japanese foods globally

  • 外国人をforeignersと表現するのは一般に差別的として避けられるので、people from other countries、people from outside Japan や non-Japaneseなどの言い方を知っておくと便利です。ここでは「外国人が」を「(日本以外の)世界的に」と考えてgloballyの表現を用いています。
  • 「敬遠する」は単に「嫌いである」と変換して、do not likeやhateを用いることも可能ですが、少し強い言い方になってしまいます。英語ではもう少し婉曲的な言い方であるless popular 「あまり人気のない」のような言い方が好まれる傾向があります。
  • 「嫌いである」の婉曲的な言い方としては、ほかに「とても好きである」を否定したdo not particularly like や do not really like といった表現もよく使われます。

今回の解説を参考に、次の日本語を英語に訳す練習をしてみましょう。解答例は次回のブログで掲載します。

練 習
生卵は少ししょうゆを混ぜてから、ご飯にかけて食べます。卵かけご飯は日本人が好む食べ方ですが、外国人にとっては抵抗があるようです。
 
 
【プロフィール】
柏木 厚子(かしわぎ あつこ)

昭和女子大学国際学部国際学科教授、国際連携本部部長。早稲田大学法学部を卒業後、イギリス留学を経て、米国コロンビア大学大学院より応用言語学・英語教授法修士号取得。『オーレックス和英辞典 第2版』では「日本紹介」執筆を担当。
Arthur O’Keefe(アーサー オキーフ)
昭和女子大学国際学部国際学科専任講師。カリフォルニア州立大学にて米文学修士号取得。『オーレックス和英辞典 第2版』では「日本紹介」執筆を担当。

リニューアルのお知らせ

このたびは、オーレックスのサイトをご訪問いただきありがとうございます。

これまでも「レックス」シリーズをご愛用いただいております皆様、心より御礼を申し上げます。
少しでもご興味を持ってくださった皆様、ぜひ店頭などで辞典をお手にとってご覧いただければ幸いに存じます。

2016年秋、『オーレックス和英辞典』を改訂いたしました。
これを機に、サイトもスマートフォンやタブレットでの閲覧がしやすい形にリニューアルいたしました。
『オーレックス和英辞典 第2版』改訂ポイントのページも新設しております。どうぞ一度ご覧ください。

引き続きオーレックスのサイトをなにとぞよろしくお願い申し上げます。

オーレックス編集部

新語リポート 第6回 借用語―花本金吾

2016年8月2日|新語リポート

 
 最終回の今回は、借用語について述べてみる。借用とは文字どおり、ある言語が別の言語から単語や表現を外来語として借用してくることで、borrowingやloanと呼ばれている。
 この借用という現象は異なる文化が接触した場合には、大小の差はあるが、必ず起こる。他の言語を圧して完全に世界語となった英語の場合には、世界各地からの借用語もどんどんとその数を増やし続けている。その流れは特にインターネットの普及によって加速した部分も大きいが、英語は歴史的にも借用語の比率が他の言語に比べて圧倒的に高く、その3分の2が借用語であるといわれている。
 その理由は、英語がたどったその複雑な歴史にある。英語はゲルマン民族の一分派アングロ・サクソン(Anglo-Saxon)の言語が母体である。アングロ・サクソンがヨーロッパ大陸からケルト系の先住民族Britonの住むブリテン島に侵攻した5世紀ころには、ブリテン島はすでにローマ帝国に征服されその支配下にあった。ここでアングロ・サクソンは上流社会を形成していたローマ軍からラテン語を多く借用した。
 その後、9~11世紀にかけては北欧からの侵攻を受け、借用を続けながら語尾変化の簡素化などの文法面での変化も進めた。
 そして英国史上での一大事件であるノルマン・コンクエスト(Norman Conquest)が1066年に起こった。ノルマン人は元来はゲルマン民族であるが、イングランド征服までにはラテン系言語圏での在住が長かったために、彼らの言語はそのラテン系言語のフランス語であった。被征服者であったイングランド人たちは競ってフランス語を身につけたので、ついにはゲルマン系言語の英語とラテン系言語のフランス語が共存するような形態となった。宮廷・法廷・大学などでは3世紀にもわたってフランス語が公用語として使われた。
 その後文芸復興の波はイングランドにも押し寄せ、ギリシャ・ローマの古典研究が盛んになることによって、ギリシャ語・ラテン語からの借用もさらに進んだ。学問名や動植物の学名などにはこの2つの古典語の要素を組み合わせたものが多く、現代科学はこの時代の借用に大きな恩恵を受けていることがわかる。
 ところで、日本語からは英語にどの程度の借用があるのであろうか。先ほど述べたように、現代英語の3分の2は借用語で、そのほとんどをラテン語、フランス語、そしてギリシャ語が占め、他の言語は残りの数パーセントを占めているに過ぎないといわれている。その数パーセントの中では、日本語はスペイン語と並んで比重が高いとされる。
 英語が日本語からの借用を受け入れ始めたのは、日本と西洋が初めて接触した16世紀半ばまでさかのぼる。最初は主に宣教師を通じて、そして鎖国時代には唯一交易を許されていたオランダ商人などを通じて、間接的に少数の日本語が英語に受け入れられた。わが国に最初に来たといわれる英国人William Adamsは、手紙の中でwacadash(脇差)やinro(印籠)を書き残した。
 大規模な受け入れが始まったのは、当然ながら開国後の、特に明治維新以降である。これを第一の大きなうねりとすれば、第二のうねりは第二次大戦以降といえよう。今年5月、広島での演説の中でオバマ大統領はhibakushaという言葉を二度使ったが、この語は広島の被爆直後から使われていた。なお参考までに、denshosha(伝承者)も英語として使われることがある。
 日本語からの借用語はほぼ日本語の発音どおりにローマ字式に綴られることが圧倒的に多いが、中には例えば、honcho(班長)、hoo(t)ch(家)、rickshaw [ricksha](人力車)、ginkgo [gingko](イチョウ)などのように完全に英語化した形の語もあれば、futonfutonのように綴りはローマ字式だが、発音が異なったり、さらに別の意味を持ったりする語もある。
 2013年にはwashoku(和食)がユネスコの無形文化遺産として登録された。料理に関する語は日本人シェフの海外での活躍などもあり、数多くが英語になっている(筆者はかつて、米西海岸でpanko(パン粉)と銘打った商品が大量生産されて店先に並べられているのを見て驚いた記憶がある)が、日本食は健康食としても人気を得ており、借用される語は今後さらに増えることが予想される。また、食に限らず日米間の友好の深化の中で、あらゆる面での相互の借用は活発で、すでに第三のうねりに達しているといえるのかもしれない。
 以上、全6回にわたり「新語レポート」と銘打って辞書編集の一側面について述べてきた。最後までお付き合いくださった方には感謝申し上げたい。
 
 
【プロフィール】花本 金吾(はなもと きんご)
早稲田大学名誉教授。専攻はアメリカ文学・アメリカ語法。『全国大学入試問題正解・英語』の校閲のほかに『英熟語ターゲット1000・4訂版』『基礎英作文問題精講・改訂版』(いずれも旺文社)など著書多数。『オーレックス英和辞典』編集委員、『オーレックス和英辞典』専門執筆。