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英語のオシゴトと私 第15回―好村直子
子供の世界を歩む

2020年7月14日|英語のオシゴトと私

 そぼ降る雨が連想される梅雨ですが、今年は豪雨と晴天を繰り返し、足早に夏へと季節を進めているように感じられます。休校中に植えたアサガオが教室のベランダに花を添えています。そして、お世話になった方々や友人の暮らしを気に留めながら、少しずつ日常を取り戻しています。

 松井孝志先生からエッセイのお話をいただいたのは、休校のまま3学期の修了式を迎えた3月でした。まだ県内ではCOVID-19の感染者が確認されていないものの、ニュースサイトで他国の状況を知るたびに、世界の形はどうなっていくのかと、心が恐怖で満たされていた頃でした。リレー記事のそうそうたる執筆陣に、場違いではないかとの思いもありましたが、「いろいろなバックグラウンドで英語教育に携わっている人がいることを知ってもらいたい」とのお言葉に、お受けすることにしました。リレー記事のバトンだけでなく、松井先生から教わったことが、日々子供たちと向き合う私の中に生き、同僚へ伝播していると言っても過言ではありません。それに、2014年に初めてお会いしてからというもの、松井先生には英語そのものから、教師としての姿勢に至るまで、多くの教えをいただいています。中でも昨年末に受講した、文字指導・handwriting指導法セミナーで得たことは、今年度の私の柱となっています。

 大学卒業後に高校で英語教師として13年間勤めた後、ご縁があり、現在はイマージョン教育を取り入れている小学校に勤務しています。児童は、English、Math(4年生まで算数の授業時数の半分を英語で行っています)、Art、P.E.を英語で学習しており、私はイマージョン科目には補助教員として関わっています。

 勤めて仕事に少しずつ慣れてきた頃、「高校生と比べて小学生はどうか」と同僚から尋ねられることがあり、興味の対象や学習姿勢が異なることを熱っぽく語ったのを今でも覚えています。ある児童が鹿の絵を描き、その説明を英語でしようとした時に、それがdeerではないと訴えてきたのです。彼が求めていた語はmoose。ヘラジカの角のカッコよさを伝えたかったのです。死刑制度や税制度、環境問題について語ることはないけれど、彼らには語りたい彼らの世界があり、そしてそのために必要な語を私がそんなに持ち合わせていないことに気づいた瞬間でした。それからというもの、児童用のリーディング教材を読むことを習慣にしています。
 また、2年生から英語日記を書かせていますが、4月から6月の終わりまで、“I like ….”の文を毎週3文ずつ書き続けた女の子がいました。担当教員とどうしたものかと、彼女のノートを前に指導法について話し合いを重ねているうちに7月になり、彼女が嬉しそうに持ってきたノートには、“I went to ….”と書かれていたのです。それからは毎週やったことや行った場所、食べたものについて書き続け、5年生になった現在も日記に日々の出来事や感じたことを綴っています。英語で書く自信を子供が持てるまで、焦らずに待つ姿勢が大切だと身をもって学びました。

 今年度は初めて1年生の担任となり、子供たちの「やりたい!知りたい!学びたい!」気持ちが満ちあふれた教室で、奮闘しています。まさに文字指導の入り口です。松井先生の文字指導のセミナーで学んだことは、国語の指導にも生きています。鉛筆の持ち方、書く時の姿勢、書き始め、とめ、はらいなど、一つひとつのステップを一緒に確認していきます。小さな手で鉛筆をぎゅっと握って力を入れすぎてしまう子には、指の置き場が分かりやすい鉛筆を用意したり、文字を絵のように認識してしまう子には、書き順やどの部分をどの場所に書くかを番号で示したりといった個々の配慮が欠かせません。そして、英語の文字指導でも、ひらがなの学習と同じように、子供たちに見せるフォントを揃え、絵と音と文字を繋げていきます。6月半ば現在、Jolly Phonicsのグループ1“s, a, t, i, p, n”を終えたところですが、絵を見てそれが表す語を言うことができても、文字を読んで発音するには十分な時間が必要だと感じています。

 マスクと消毒とソーシャル・ディスタンスが合言葉になっていますが、世界の形が変わっていく中で、音を束ね、言葉を束ねて学んでいく子供たちとの日々の暮らしを、より鮮やかに色づけられるように、努力を重ねていきたいと考えています。

 

 

【プロフィール】好村 直子(よしむら・なおこ)

岡山県在住。私立高校教諭を経て、現在は就実小学校教諭。趣味は旅行、ミュージカル・演劇・映画・音楽鑑賞ですが、最近では何をするにも難しいので、スパイスカレー作りを始めました。